ロバ日記

これほど旅行を勧めるのはなぜ? 〜旅の効能について〜

今までいろいろなヒントを書いてきましたが、ついに最終回となりました。
今回は、旅行にお誘いする理由について書いていきたいと思います。
宿のオーナーとして、お客様が増えるようにという気持ちも正直ありますが、
そんな事よりもっと大切な事を…。

日本人全体が旅行しなくなっている

現在日本において、旅行に出る人数は全ての年代で減少しています。
こちらによると2005年と2015年を比較したときに、のべ宿泊数は13%減少しています。
総人口で見ると3%減ですから、日本人全体が旅行離れしているのは明らかなようです。
理由は様々ですが、経済的に厳しい点と、休暇が取りづらくなっている点が大きいのでしょう。

旅行に対する魅力がなくなったのかと言うと、そうではありません。
こちらのページを見ても8割の方が1年以内に旅行したいと考えているようです。
そう考えると、「行きたくても行けない」方が増えているのだと思います。

一方、高齢者。
お金もあります、時間もあります、人数も増えています。
それなのに、旅行する方は増えていません。
先ほどのデータで見ても、50代以上の方は10年間で1割以上旅行者が減っています。

要介護者限定になりますが、こんなデータがあります。

要介護者と旅行したことがない理由(複数回答)
医療と旅行の関係

私が看護学校に通っていたのは20年ほど前。
(もうそんなに経ってしまったことに、今更ながら驚きます…)
持病持った方の旅行に関した講義は、全くなかったように思います。
それどころか地域医療、地域看護という概念もあまり根付いていませんでした。

それから時がたち、訪問診療も介護サービスも当たり前の時代になりました。
私が宿を開業した10年前、
「これからは障害があっても旅行に出る人は増えるだろう」と予測していました。
なぜなら、高齢化率の上昇や脳血管疾患の救命率向上に伴い、
高齢者や障害者の絶対数が増えるのは確実だったからです。
しかし旅行する方は増えませんでした。
正しくは高齢者数の上昇率ほど増えていないと言うべきでしょうか。

バリアフリー旅行に関する情報は格段に増えました。
取り扱う業者も増えました。
確かに、旅行を楽しまれる方もいます。
それでもそれはほんの一握りと言わざるを得ません。

以前、病院の脳神経外科やリハビリテーション科に宿の宣伝をした事があります。
脳神経外科が脳梗塞、脳出血など後遺症を伴いやすい病気を扱っており、
宣伝には効果的と思ったからです。

しかし、ほとんど効果はありませんでした。
看護師やリハ職の方からもあまり前向きなお言葉はもらえません。
まるで医療の中に旅行は含まれていないような印象を持つほどでした。

医療者は治療に必要なこと以外に、関心を持つことは難しいようです。
費用と効果を考えれば、旅行は家族内でのイベントとされ、
あえて勧める必要がないと思っているようです。
リハビリテーションの中に「旅行」が追加され、
かつ保険適応になったとしたら、もっと注目し、興味を持ってくれるのかもしれません。

旅行をするとこんな効果が

「本人も旅行したからないし、自分にも時間がない」、
「不安が大きく、旅行なんて行ける訳がない」。
家族内ではいろいろと理由があり、なかなか一歩が踏み出せないようです。
医療者も積極的に旅行を勧めたりはしません。
こういった理由が、介護旅行の増加を妨げている理由なのだと思います。

では皆様に、ここまで勧めるのはなぜでしょう。
それは今まで旅行されていなかった方が一歩踏み出すと、変化が現れる事が多いからです。
残念ながら、動けなかった方が急に歩けるようになる訳ではありません。
身体的な面より精神面の方がむしろ大きいかと。

一番大きな効果は、「旅行に行けるという自信」です。
多くの方が「旅行になんて行ける訳がない」と思いがちですが、
実際に楽しめると「自分でも行けるんだ」と気持ちが変化します。
この変化が大切です。
その変化はご家族にもたらされます。
「無理かと思っていたけど行けるんだ」とご家族も思うのです。

一度旅行出来ると、今までの不安がかなり軽減されます。
そのデータが上記、第一生命の調査にあります。
旅行をした事がない方の旅行前に感じる不安が8割を超えていたのに対し、
旅行経験者が次の旅行をする前の不安は5割前後に軽減されるのです。

「自分でも出来る」「次にどこに行こう」という気持ちの変化は、
日常生活にも活かされます。
いままで、乗り気でなかったリハビリも、ただ流れていた生活も、
モチベーションが上がる可能性が高いんですね。
次への旅行に意欲が出たなら、とても良い循環に繋がる可能性が高いです。
「これがしたい」「アレを食べたい」…まさに、生きる意欲にも繋がる変化です。

私が訪問看護を続けている中で、よく考える事があります。
それは生きる意欲をどう引き出すか。
仕事の特性上、対象者は多くの方が高齢です。
その方たちと接していて、
「もう少し生きる意欲が出てきてくれたら…」と思う事が多いのです。

もちろん、人生で言えば折り返し地点をとうに過ぎ、
衰退してくのが自然な事なのかもしれません。
それでも、前向きに日々を生きている方はたくさんいます。
苦しい中でも自分で出来る事を行い、
小さな幸せを感じている方はたくさんいるのです。

一度旅行に出れば、急に前向きになるとは思いません。
ただ、旅行という行動が、
今まで落ち込んでいた気分や萎えていた生きる希望を
少しでも蘇らせるきっかけになるのではないかと思うのです。

もし、久しぶりの旅行を楽しめたならば、
人生を振り返った時に、「あの時の旅行がきっかけだったのかも」と思ったり、
「あの時に旅行に行けてよかった」と充実感に満たされる事に繋がるかもしれません。
旅行にはそれだけの力があると思っています。

「そんなにうまく行くだろうか…」と、思われた方、
旅行の満足感を口にされる方、とても多いですよ。

確かに旅行は大変

一般の方でも旅行するとなれば、あれこれ準備が大変です。
今までずっと引きこもっていた方が、外に出るのが大変なのはなおの事。
それでも、家に帰ってきたら「行ってよかった〜」と
思える状態になっているのではないでしょうか。

ある片麻痺の方がお話しされていました。

別に旅行に行きたいとは思っていない。
大変な事ばかりでよっぽど家にいる方がいいと思ってる。
でも、行ってみると楽しい事もある、新しい発見もある。
それにうちの妻が嬉しそうな顔をするから行くんだ。

その方は今でもご自分で運転されています。

今までの生活からちょっと変化をつけてみる。
「よし、行ってみよう!」と、
一歩、踏み出してはいかかでしょうか。

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