- お客様
なぜロバを飼っているんですか?
お客様から本当によく聞かれる質問です。犬や馬がいる宿はあるかと思いますが、ロバはなかなかないですよね。誰もが知っているロバですが、実際に見ることが少ない動物がロバなんです。
「もも」は和みの風で生まれました
宿を開業する時、施工して頂いた会社の方にポニーを勧められました。全く考えてはいませんでしたが、確かに十勝の青空にポニーはお似合いです。聞くとその方が牧場を紹介して頂けるとの事で、早速見学に。
広い牧場にはかわいいポニーがいました。夢を巡らせているとその隣にロバが。
「ロバの方が可愛いなぁ」
ということで、ロバを迎え入れることになったのです。理由はそれだけ。開業時に来てくれたロバは親子2頭。「さくら」と「くるみ」。そして、今庭にいるのは女の子の「もも」。2011年6月8日に「さくら」からこの小屋で生まれました。生まれた時は大型犬くらいでしょうか。
草食動物だけあって、生まれたらすぐ立ち上がりました。かわいらしさはとてもとても。残念ながら「さくら」と「くるみ」はいなくなりましたが、毎日ロバの庭を走り回っていました。今ではゆったりと庭の草を食み、時々お客様からもらうおやつを美味しそうに食べています。毎日のんびりと。今までのロバたちの記録はこちらから。
ロバの生活ってどんな感じ?
ロバの生活ってイメージできないですよね。ここでは「もも」の日常についてお伝えします。
ロバの食べ物
1)草
「ロバって何を食べるんですか?」
これもよくいただく質問。ロバは草食動物なので草がメイン。青草が生えている時は庭に放牧して好きなように食べています。飼う側としては楽ちんです。餌の用意をしなくて良いので。ただ、ロバにも好き嫌いがあるんですね。好きな草ばかり食べてしまうので、最近の庭は嫌いな草ばかり残ってしまい、ちょっとした悩みです。食べず嫌いもあるようで、以前は食べなかったものも急に食べ始めたりということも。ちなみに馬といえばニンジンが好きですが、「もも」は全く食べません。
「ロバ肥ゆる秋」という言葉があるかと思うほど、秋はさらに食欲が増します。厳しい冬を迎えるための準備ですね。十分に食べ冬毛に変わるとまるまるとした感じに。
そして、−20度が当たり前の十勝の冬。当然、雪で覆われており青草は食べられません。近所に酪農家さんがおりますので、ロール(干し草)を分けていただいています。毎日一抱え程度の干し草を美味しそうに食べています。
牛のために作られたこのロール、牧草地帯の風景で見たことがある方も多いでしょう。餌のために育てられた草は刈り取られ、そのまま数日乾燥。ロールベーラーと言われる機械で約300kg以上にもなるロールに仕上げます。中で発酵させるためにビニールシートをぐるぐる巻きに。ちなみに色の違いはあまりなく、牧場主の好み。一番草と二番草で分ける方もいるそうですよ。
2)濃厚飼料
「ロバは粗食に耐える」と言われるそうで、食べ物は草のみ。なんですが、おやつは大好きです。「濃厚飼料」と呼ばれ、小麦の殻やとうもろこしなど牛用に作られている餌を喜んで食べます。食べ過ぎは爪の病気に繋がるので、与える量は気をつけなければなりません。
3)岩塩
これわかりますか?20cm角の四角い物体。これ塩なんですね。ロバを始め、牛や馬でも塩分が必要なんだそうです。だからこれを置いておくと、ペロペロなめます。そうですねぇ、この大きさで半年以上は持ちますかね。ちなみに飲食店など入り口に置かれた盛り塩は、牛車のウシになめさせて客を呼び込むことが起源だそうですよ。
4)水
当然ながら水も大切。牛とは違ってバケツ一杯置いておけば十分。問題なのが冬。当然凍ります。日中だってマイナスの日が普通なので、すぐにシャーベット。外が寒いのに氷水を飲むのは罰ゲームにしかならないので、お湯をあげています。早く飲まないとやっぱり凍ってしまうので、1日2回あげています。なぜかわかりませんが、夜によく飲んでくれるんです。
ロバ小屋のお手入れ
当然ながら糞もします。牛とは違って二回り大きいほどの空豆といった感じです。だいたい1日バケツ1杯程でしょうか。しっかり作れば立派な肥料になりますよ。うちではそこまでしませんが。小屋の中に残った糞を掃除して寝藁を敷きます。小屋の中でゆっくり休めるように。庭は何もしていません。庭にも糞はありますが、数日もすれば肥料として土に還ります。臭いもほとんどありません。むしろ、おしっこの方がちょっとキツイです。
爪切りと寄生虫予防
年に2回ほど爪切りをします。歩くことが多ければ爪も自然に削れるので良いですが、普段歩かないももにとっては大事なお仕事。爪の形で歩き方も変わる大事な処置なので、専門家にお任せしています。お呼びするのは、普段牛や馬の爪を切ることをお仕事にしている削蹄師さん。「さくていし」と呼びます。ロバの削蹄は初めてだったようですが、今では手早く整えてくれます。健康状態も相談できるのがありがたいですね。
爪切りと同時に寄生虫予防のための薬を投与します。馬には腸管に寄生虫が増えすぎることがあり、腹痛などを引き起こす場合があるそうです。病気になってからでは遅いので、予防的に対処するんですね。
病気といえば、犬猫と違って動物病院に連れて行くことができません。十勝は牛や馬が多いのでそれらを対象とした獣医さんがたくさん。わざわざ来て頂くことになります。「さくら」や「くるみ」が病気になった時はお世話になりました。人間もそうですが、病気は予防が大切なので、できるだけお世話にならないようにしたいですね。
ロバの魅力って何でしょう
ロバの別名は「うさぎうま」。ウサギのように耳が長いからですね。別々に動く耳で周囲の音を聞き分けます。尻尾は先の方だけふさふさ。この2点が馬との見分け方としてわかりやすいです。
誰もが知っていますが、見たことがある人は少ないロバ。なぜか触れ合っていると、その魅力に惹かれます。芸をするわけでも、映えることもありません。その素朴な佇まいとのんびりな性格が、見る方を惹きつけるようです。庭でただ草を食んでいる姿をぼーっと見ているだけでも、とても癒されます。そんな時間の流れが変わるようなのんびりさが、ロバの魅力なのだと思います。
日本には200頭ほどのロバがいると言われているそうですが、そこまで多くはなさそうです。一方、海外に目を移すと何100万頭ものロバが生活しています。その一部は家畜として飼われ、荷物などを運ぶ仕事を頑張っています。性格は頑固で臆病とも言われますが、飼い主との信頼関係があるからこそ、力強く生きているのだと思います。
最近、日本でもロバが身近に感じられ、その魅力がもっと広がればいいなと思うようになりました。ただでさえ忙しく、スピードが求められる現在。そのロバの穏やかさ、佇まい、雰囲気を感じて、癒される時間がすごせたら何かが変わるような感じがしてなりません。ただ草を食むだけの生活、そんなロバの生き方を多くの方に感じていただければいいなぁと思っています。