和みの風は北海道十勝の清水町という地で開業しました。よく「どうしてここに?」と質問がありますが、実家があるわけではなく、私はただ北海道好きの移住組です。こういったきっかけでつながりを持ったのが清水町なんですね。「〇〇町」というと「市」を細分化した区画のように思われる方もいるでしょうが、北海道では人口が少ないだけで市と同じような機能を持っています。何せ、清水町は400㎢もあり、その大きさは東京23区の2/3もあるのですから。
保育園留学ってなんですか?
そんな大きな北海道清水町の中にできた「しみず認定こども園 ぽっけ」。以前清水町には二つの保育所(十勝では保育園ではなく保育所が通例)と幼稚園があり、令和2年に合併しました。清水町に住んでいる小学生未満のお子さんたちの多くを保育・育児する場所になったのです。ちなみに「ぽっけ」とはアイヌ語で「温かい」という意味。「ぽっけ(ポケット)いっぱいの幸せを持ち、あたたかなぽっけの中で町民の皆さんから育まれる子どもたち」という願いが込められているそうですよ。
十勝の空の大きな大自然は、私たちが宿を創った理由の一つ。その広さは子供たちが育まれる場としても最適でしょう。それは「保育園留学」の地としても好適地だったのですね。
保育園留学とは、自宅から離れて1〜2週間ほど好きな保育園での暮らし体験を指します。旅行気分で家族みんなで移動、ご両親はテレワークでお仕事を続けながらお子さんたちは新たな環境で過ごします。この、「お仕事をしながら」というのがミソ。お仕事はそう簡単に休めませんが、コロナ禍を通じてテレワークの環境が整ったことで、職場に迷惑をかけなくて済むようになったのです。
保育園留学の場所は全国で39個所あります(令和6年4月現在)。北海道はもちろん南は鹿児島にも。海や山での体験や動物との触れ合いの他、英語教育に特化した施設なども選べます。体験を選べる上に、その土地の異なる環境もまた、お子さんたちを育てる上でとてもいい経験になるのではないでしょうか。
十勝清水町こども園「ぽっけ」はここがスゴイ
実は私の子供たちは、ぽっけの前身の清水第一保育所に通っていました。合併の際、隣の敷地に移動したため、全てが新しい風景です。新築の建物には大きな園庭と広々とした教室。清水町は多くの山々で囲まれていますから、木もふんだんに使われた内装です。混み合うことのないよう広々とした玄関を通ると、以前とはあまりにも違う長くて開放的な廊下。元気な子供たちの声が響き、なんだか楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
教室は全部で13。年齢別に分かれて過ごしていますが、異年齢が一緒の教室で過ごす縦割り保育も率先しておこなっています。ご兄弟がいないお子さんにもいい経験になるでしょうね。
特筆すべきは園庭の広さ。3,000㎡との事ですが、わかりやすくいうとテニスコート12面分の広さです。保育園留学の体験児には、お友達に「駐車場を走ったらダメだよ」と話していたというエピソードが出るほど。その子にはグラウンドが駐車場ほど広いと感じたんですね。
雲ひとつない「十勝晴れ」を感じながら、いくら走っても誰にも怒られることはありません。その解放感はとても大きな思い出になるでしょう。ぽっけにいる時間にもよりますが、1日数時間遊ぶ時間がしっかり割り当てられています。
みんなで遊んだり、給食を食べたり、お昼寝したりと1日のスケジュールは一般的な保育園とさほど変わりません。でも、それぞれの内容や環境は十勝らしさが光っているようです。
例えば十勝のめぐみをふんだんに使った給食。周りはたくさんの畑があるのできゅうりやトマト、ブロッコリーにとうもろこし、じゃがいもにかぼちゃ…、季節に合わせたお野菜がいくらでも挙がります。牛舎や鶏舎もありますから新鮮な牛乳や乳製品、卵だって清水町産です。地産地消が普通に味わえるのも清水町「ぽっけ」のうれしさ。
お腹いっぱいになったら、みんなと一緒にお昼寝タイム。この時間、先生方は午前中の過ごし方をノートに記してくれます。起きた子からまた園庭に飛び出し、気がついたらもう夕方。ご両親に迎えに来てもらって家路に着きます。
「ぽっけ」らしい行事たち
留学中、職員の方は積極的に行事を考えてくれているようです。外のお散歩は天気とにらめっこしてまめに実施。運が良ければバスでの遠足もあるんです。保育園の遠足といえば、一般的なのは動物園。でも「ぽっけ」ではもっと間近に動物と触れ合える場所があります。そう、乳牛を飼育している酪農家さんです。ごく普通に飲んでいる牛乳ですが、牛を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。実際に目の前にすると、かなりの迫力に圧倒されます。低い視線から見上げる牛の顔は恐怖に感じる子も多いでしょう。一転、子牛にミルクをあげる体験は、きっと目を輝かせてママたちに報告してくれるに違いありません。
発表会や運動会、留学時期によって参加できる行事は異なりますが、タイミングが合えばより思い出深い体験ができることと思います。
また、清水町は冬になると雪に覆われます。日本海側のような雪国ではなく、降ったとしても膝の高さくらい。そんな雪景色に覆われた時期の留学もおすすめ。普段見慣れない雪が見えるもの全てを覆い尽くしますから、その景色は記憶に残ります。グラウンドの築山は雪遊びの格好の場。そり遊びになると子どもたちの無限体力に大人の方が参ってしまうほどです。長靴を履いてアイスホッケー体験もできるとか。
雪の運転が心配という方、帯広空港からバスとJRを乗り継げば車なしでも生活できます。あ、スーパーで買った物はソリに乗せると楽に移動できるんですよ(笑)。
保育園以外の生活は?
保育園留学は保育以外の時間も新鮮な環境です。自宅とは違ったお家に自転車で帰宅。家電はもちろん、調理道具も揃っていますので自宅と同じように過ごすことができます。近くのスーパで買い出しするのも、普段とは違う食材が多く興味が尽きることはないでしょう。十勝の小麦を使ったパン屋、新鮮な牛乳でできたアイスなど北海道らしい食べ物だってたくさんあります。
観光牧場や展望台など観光スポットも点在しており、休日には十勝らしさを満喫することもできます。具体的に挙げれば十勝千年の森、藤田牧場、森の馬小屋、TAC(ラフティング)、ボレアルフォレスト(カヌー)、円山展望台、トムラウシ温泉…。近くの川で釣り三昧もいいですね。清水町名産の食材をふんだんに使ったアスパラ祭りやにんにく祭り、町民みんなで盛り上げる清流祭りなど、商業化されていない地域のお祭りも堪能できるかもしれません。
いつもと全く違う毎日は、あっと間にすぎていくでしょう。
「非現実から戻らなきゃいけないの…」
こんな保育園留学で、子どもたちは一体何が変わるでしょうか。多くの体験談を聞いていると、やはりその大自然と食材の美味しさへの反応。そして、近所の方々のふれあいをあげる方が結構いるようです。こういった地域は人と人との触れ合いの場が多く残っており、その優しさに癒やされる場面も多いんですね。
普段はスマホばかりのお子さんでも、虫や動物に興味を持ったり、自ら道具を使って遊び方が変わったりと大きな成長が見られるそうです。北海道十勝という環境が豊かな心を育んでくれるのだと思います。
上の言葉は大人ではなく参加したお子さんから。自分の置かれた状況をしっかりわかっているんですね。あまりに幸せな時間が過ぎたので、その寂しさも伝わってきます。でも、ぽっけで得た素晴らしい思い出は、ずっと残っているに違いありません。
出会いがあれば、別れもあります。私が一つ心配したのは、残された子どもたちの気持ち。保育園留学で来られるお子さんがたくさんいるので、お別れを何度もするのはかわいそうなのではないかと。………そんなことは考え過ぎでした。聞いてみると、また新しいお友達も来るし、楽しいことはたくさんあるようです。
人気があり過ぎて…ごめんなさい
料金については1週間で20万円前後、と普段の旅行よりは高額になるのは否めません。ただ、家族3人で1週間、しかも保育料付きと考えると、とてもいい仕組みなのではないかと思います。何せ、仕事の休みを取らなくてもいいというのがハードル下がりますよね。できれば存分に楽しめるよう2週間がおすすめです。
残念ながら、ぽっけの保育園留学はとても人気で現在満室が続いています。すぐに留学はできませんが、一度見学がてら遊びに来るのはいかがでしょうか。清水町と触れ合って、イメージを膨らませるのも良いかもしれません。清水町の暮らしに疑問がありましたら、なんでもお答えしますのでご連絡くださいね。
十勝の青空が時の流れも人も変えてくれます。よかったらどうぞ。