北海道で一番標高の高い湖が、十勝にある「然別湖(しかりべつこ)」。ここでは冬になると毎年氷の村が現れます。コタンはアイヌ語で「村」。手作りで仕上げられた氷の小屋(イグルー)や透明な氷を混ぜ込んだアイスチャペルなどが点在。その美しさには目を見張りますが、制作される方の努力は並大抵ではありません。
雪と氷と静寂の中で
高い透明度を保つ然別湖は、冬になると全て氷に閉ざされます。その厚さは何と1m。頑丈な地盤だからこそ、重量のある氷の作品を築くことができるのです。
一つ一つ氷で作られたブロックで積み上げられたのはイグルー。目に入るものは全て氷、それ以外はありません。入ってみると思いのほか寒くないことに気が付きます。風がない分、体感温度が上がるのですね。
椅子やテーブルも氷で作ります。然別湖で切り出された透き通る氷たち。デザインも個性的で、思わず写真を撮りたくなります。
コタンといえばアイスバー。透明度の高い氷で作られた柱が美しいですね。さまざまなお酒が並び、華やかさを増しています。
自ら氷を削りマイグラスを作ることも(有料)。-10℃の中氷を削り出し、冷えたドリンクを飲む。なかなか貴重な体験ですね。ホットドリンクもありますので、温まりたい方はそちらがおすすめ。
驚かされるのが露天風呂。今年クラウドファンディングで得られた資金をもとに、浴槽を新調しました。足浴用も設置されるそうです。温泉は鉄分が多く酸化したさび色。体の芯まで温まることができます。周りは空と氷ばかり、世界に一つだけの湖上の温泉が、開放的な気分にさせてくれますよ。
しかりべつ湖コタンの作り方
コタンは1万を超えるブロックで成り立っています。使うのは十勝で育てられた野菜を収穫するコンテナ。水を混ぜシャーベット状にした雪を詰め込みます。-10℃を下回る気温の中放置すれば、頑丈なブロックの出来上がり。移動も積み上げも一つ一つ手作業。その根気のいる作業に頭が下がります。
建物は氷以外の柱がありません。製作時は木製の柱を使いますが、屋根を作ったら全て取り外します。柱があると建造物になってしまうので、許可が必要になるとのこと。ここは陸なので重機は使えますが、湖面には重すぎて入れません。やはり人の力。
アイスバーでの氷の柱は、白い濁りもなく限りなく透明でした。もちろんこれも然別湖産。切り出した氷はこういった透明のもあれば、空気が入って白いものもあります。その違いは何なのでしょう。答えはこちらに。
寒さで冷やされた氷は不純物が含まれないので透明、その上に積もった雪に水がしみ込んで凍ったのが白い氷、だそうです。透明と白い氷をうまく組み合わせて、このコタンは作られています。材料はたくさんありますが、それを作り上げた苦労は大変なものでしょう。
切り出された白い氷の中に、クラッシュアイス様の透明な氷がはめ込まれています。こういう細かな作業のこだわりが、全体の質を高めています。じっくりみると、いろいろな工夫が散りばめられていますよ。
1980年に「ホテル風水」の職員ら3人で「湖にイグルーを作ろう!」というのがきっかけ。もう40年以上も続けています。自然な氷の美しさを感じてほしいと、あえて色をつけないのは開村当時からのポリシーです。
制作は過酷な状況で大変な作業が続きますが、得る物も大きくリピーターさんが多いそうです。また、人間関係に悩んでいる方や心が疲れている方が来る事も。毎日顔を合わせ、打ち解けあううちに、いろいろな悩み事を話せるようになり、大自然の中で癒されて帰っていくのだとか。ボランティアとしての作業がきっかけとなり、結婚された方もいるそうです。時には優しく、時には厳しく、大自然の環境が人をゆっくりと変えていくのかもしれません。
扇ヶ原展望台もおすすめ
今年は1月28日(土)〜3月12日(日)の44日間。天候により終了が早まる可能性もありますので、お早めのお越しをお勧めします。和みの風から車で35分。
途中の「扇ヶ原展望台」にちょっと寄るのもお勧めです。こんなすばらしい景色がお待ちしております!