先日ご宿泊頂いたお客様。
今年3月、埼玉から北海道北竜町に移住してきました。
北竜町と言えば広大なひまわり畑。
ひまわり迷路も有名ですね。
このご夫婦の移住のきっかけがすごいんです。
本当に人生の転機だなぁと思いました。
そしてその選択は、この夫婦を救ったのだとも思いました。
やはりどんな病気も早期発見、早期治療が有効なんですね。
若年性アルツハイマーと告げられて
「そんなに忙しかったかなぁ」
と笑いながらいう御主人ですが、
実は身体的にも精神的にもかなり負担を強いる仕事を続けていたそうです。
ある時ご家族は記憶の一部がすっかり抜けていることを気にし始めました。それは仕事中も同じで、部下達に首を傾けられることもしばしば。
「そんな大事なことをちゃんと伝えなさい」
「え?伝えましたよ…」意を決して医師の診察を受けると意外な返答が。
「御主人は初期の若年性アルツハイマーですね。」
今の時代「癌」と告げられる以上に、酷な告知です。
なぜなら、癌は治療の余地がある場合が多いのですが、
この病気は治療のすべはなく、症状を遅らせることしか出来ないからです。
この病気は認知症の一つ。
簡単にいえば徐々に記憶の能力が低下し、日常生活がままならなく病気です。ご本人、ご家族とも本当に悩みました。
画像検査でも問診でもはっきり示されており、揺るがない現実が目の前にあるのです。
そして奥さんは決断しました。
「環境を変えよう」と。それは、北海道で受けたセカンドオピニオンとしての診断が
この様な結果だったのです。
「まだアルツハイマーではなくストレス障害によるものです。
ただこの生活を続ければ発症する可能性もあります。
四季のはっきりした北海道での生活はどうですか?」人生の転機
決意を胸に北海道北竜町へやってきました。
北竜町を選んだのは、若年性アルツハイマー患者会
「彩星の会(ほしのかい)」の会長が北竜町の方だったから。
今までとはまるで違う生活の始まりです。もう、書類に囲まれることも、時間に追われる事もありません。
まわりの人々が笑顔で接してくれます。
その生活が少しずつではありますが、御主人に変化をもたらしました。
今まですっかり抜けていた一時的な記憶喪失が徐々になくなっていったのです。私もその病名を聞かなければ全く分かりませんでした。
そして聞いても全く実感がありませんでした。
なぜなら、一度聞いた名前も覚えていられますし、
今までの病状経過もしっかり覚えていたからです。そしてこれから
今年の7月より北竜町の「地域おこし協力隊」として任命されました。
これは北竜町の観光資源や名産品を紹介するお仕事。
町おこしのきっかけ作りをすることになったのです。「よく町を変えるためにはよそ者、若者、ばか者を入れろっていうでしょ。
私はばか者ですね。」
と笑いながら話す御主人ですが、そうではないですね。よそ者はもちろんのこと北竜町の住民の多くは高齢者で
50代の御主人はまだまだ「若者」ですから。
「忙しくなったらアルツひどくなるのであまり仕事を与えないで下さいって言いますよ」
と、奥さんは笑いながら話しますが、それまでの苦労があったからこそ、
これだけオープンに明るく振る舞えるのだと思います。
愛車黄色いコペン「ひまわり号」に乗って、今日も北竜町の各地を回ります。
多くの方々に北竜町を知ってもらうために…。