ロバ日記

看護雑誌に載せて頂きました!

ちょっと古い話で恐縮ですが、「コミュニティ・ケア」という看護雑誌に
記事を書かせて頂きました。
病院勤務だけでなく様々な方面に看護師が活躍しているという事で、
色々な方を紹介する連載記事があります。
その中で「和みの風」について書いて欲しいと依頼があったのです。
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はい~。書きますよ~。
4ページ、4500文字と、
以前書いた環境新聞社さんのコラムとは違いだいぶボリュームアップ。
色々考え、何とか。
とても長いのでお時間のある時にお読み頂ければ…。

めざせ! 開業ナース

旅行が難しい方にも旅の幸せを感じてほしい
―バリアフリーの宿をオープン

看護師から宿のオーナーへ ―どうして宿なの?

・旅行が難しい方を迎え入れる宿をつくりたい
大学3年の頃、臨床心理とターミナルケアに興味を持った私は、大学卒業後、看護師の道を選択しました。看護師となり、東京の大学病院で3年間勤務した後、結婚と同時に大好きな北海道へ引越し、念願の緩和ケア病棟に勤務する事ができました。
「看護師を続けていくと…」ふと将来を考えました。「患者さんとの関わりを大切にしていきたい。でも先行きは現場から離れていく。」そんな気がした私は、まだ看護師を始めて5年だというのに、病棟看護師ではない看護の仕事を考える様になりました。考える日々が続いていた時、ハッと思い出したのが、新人の頃に聞いた患者さんの言葉でした。
「看護婦さんが一緒だったら旅行できるのになぁ。」
片麻痺の方の多くが、ほとんど外出しておられず、看護師から見れば十分活動できるレベルなのに、「旅行なんて出来る訳がない」と始めから諦めている現状を知りました。
「だったら、迎え入れる宿を作ればいいんだ!」とひらめいたのです。「旅は最高のリハビリ」という言葉があります。そして「看護師がいる」という事は大きな安心材料です。意欲に燃えた私は「旅行が難しい方でも旅の幸せを感じて欲しい」と一気に事業計画書を書き上げ、様々な方が安心して泊まれる宿を目指して動き出し始めました。
・看護師として働きながら宿をオープン
宿をつくる場所を十勝に決めました。北海道らしい景色である上に、食材の宝庫、札幌から3時間もあれば到着するというアクセスの良さも一因です。資金の関係から、既存の建物をリフォームする事にしました。なかなか思う物件が見当たらず、半ば諦めかけていた時、運良く声をかけてくれたのが十勝・清水町役場の方でした。紹介して頂いた物件は、保育園や公民館として使用されていたもの。小鳥がさえずり、時折リスが跳ね、青空と大地が広がる、そんなとても落ち着ける風景がそこにはあり、決定に至りました。
「片麻痺の方にも是非来て頂きたい」と考えた私は、勉強のため脳神経外科の病院で勤務しました。その後、現地の状況をもっと知りたいと十勝へ移住し、患者さんの生活を知るべきだと考え、訪問看護ステーションに勤務しました。看護師として勤務しながらリフォームの設計、備品や什器の購入、書類の作成などを進め、2008年7月「和みの風」はオープンしたのです。

「和みの風」を始めてみて
―リラックスできる環境を作りたい

・障害者優先の宿は作りたくない
「和みの風」をオープンする前に、「バリアフリーの宿」を数カ所、下見に行きました。そこで感じたものは、障害者に対して安心なサービスを進めるあまりにできる、一般の方との溝でした。内装1つとっても、無機質なステンレスが目についたり、広すぎるスペースが落ち着かなかったりと、理想とは異なりました。
私達夫婦はほっこりとした和風の雰囲気が好きなので、建物や装飾を木で統一しました。手すりは木材で2段にし、機能性を保ちつつも雰囲気に溶け込むようにした為、手すりとは気がつかない方もいます。玄関のスロープは必要時のみ設置し、普段は収納できるようにしました。常時置いてしまうと玄関を占領してしまうだけでなく、不必要な方には危険だからです。こういった工夫を重ねて、理想へと近づけていきました。
障害があるからといって、あまり特別にはしたくありません。他のお客様と同様に、日常を忘れリラックスして頂くためにはどうしたら良いかと、常々考えています。
・”旅”での関わりだからこその難しさ
車椅子を利用する脳性麻痺の方がいらっしゃいました。何度も一緒に旅行しているボランティアの方、以前、ヘルパーとして自宅を訪問していた方、3人での宿泊です。予約時は有料の入浴介助を依頼されましたが、夕食後、急遽変更されました。
「いいよね。女同士だもん。一緒に入っちゃおう。」
3人での楽しい入浴時間は、介護する側・される側ではありません。友人として一緒に旅行を楽しんでいるという関係性があり、皆さん満足されたと感じました。私達スタッフによる入浴介助では、このような素晴らしい時間を持つ事は難しかったと強く思いました。
一方、片麻痺となり、施設に入居されている方がいらっしゃったことがあります。「母親にも旅行させたい」と3人の娘さんが計画され、4人での宿泊です。
「ゆっくりお湯に浸かりたい」―そう母親が希望していると、入浴介助の依頼があり、妻が介助に入り、娘さん達は傍らで見学をされました。リフトで浴槽に浸かった後、娘さんとの時間を大切にしたいと考え、妻は浴室から出てきました。しかし、間もなく娘さんから声がかかりました。本人に聞いてみると、普段は臥床したままの入浴のため、久しぶりの坐位での入浴は不安が強かった様子。娘さん達もどのように接して良いのか分からず、困ってしまった様子でした。
他にも、排泄、おむつ交換、食事、体位調整と、娘さん達は四苦八苦され、所々で声がかかり介入をしました。
両者に「旅行できた」と満足感は得られましたが、日常を忘れリラックス出来たかというと疑問が残り、お互いに疲れただろう、大変であっただろうと、感じずにはいられませんでした。もしかすると、本人・家族共に、スタッフが看護師であれば全て介護をしてくれると考えていたかもしれません。
入浴を始めとする日常生活の様々な場面において、病院や在宅では当たり前に看護者が介入します。しかし、治療でも生活でもない「非日常」の中で、私達がどのような介入をする事が満足に繋がるのか考えさせられます。宿なので、情報収集をすること自体、違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います。その意識の差をどうやって埋めていくかが今後の課題の1つです。
・食物アレルギーというバリア
開業準備中、息子が生まれました。生後3ヶ月目には発疹、掻痒感が現れました。診断名はアトピー性皮膚炎。食物アレルギーによるもので、アレルゲンは卵、牛乳、米、小麦、イモ類、牛肉、鶏肉、タラと多数でした。
食べられる食材を探してお店を回り、やりくりする日々。旅行はおろか外食すらままならない中での看護師勤務と、休日の土地探しが続きました。この時、事業計画書に自ら記していた「旅行が難しい方」というのは、体が不自由な方ばかりではないと身をもって体験しました。
食物アレルギーを持つ子どもの親の気持ちが理解できた私達は、アレルゲン除去食を追加料金を頂かずに、サービスの一つとして提供しています。食材の間違いが病状を悪化させる危険性もあるので神経を使いますが、なかなか旅行に行けなかった私達の願いからです。
「小麦アレルギーで大変でした。私が一番ゆっくり出来ました。ここでは安心していられました。」
といった母親の声を頂けたのは、息子のおかげだと痛感しています。

小さなニーズをキャッチする”看護師の視点”が生きる

宿を始めて、都市部の病棟看護師を続けていては得られなかった、数多くの体験を得ています。常に十勝の大自然に触れられる事にも、とても満足しています。周囲は畑に囲まれ、近所は農家・酪農家ばかり。今まで普通に食べて来た野菜や牛乳がこんな風に作られ、出荷されているという現状を肌で感じる事が出来ました。その作物に対する想いを多くの方から聞く事も出来ました。また、サーピスを提供するにしても、経営者となった事で、幅広い視野を持つ為に十分な役割を果たしてくれているように思います。
宿を始めると、実に様々な方と出会えます。お客さん一人ひとりが、どのような事を望んでいるのかを考えながら、サービスを提供していきたいと考えています。その個別性を考える事そのものに、看護の視点が活かされていると考えます。
当宿に対して「とても満足できました」と感想を頂くのも、お客さんの小さなニーズを敏感にキャッチできたからだと思っています。「看護の視点が活かせるのは病院だけではない」と、改めて感じられたのは、この仕事を始めたからです。
「hotel」も「hospital」も語源は同じ「おもてなし」。相手の気持ちを感じ、行動する事で満足してもらうといったプロセスに”看護の原点”を感じられるようにもなりました。

一人でも多くの人に旅の幸せを感じてもらいたい

健康上の不安があり旅行が難しい方の宿泊は、まだ1割程です。「看護師がいる」という特殊性を生かし、旅行する事を躊躇われている方々が、「外に出てみよう」と考えられるきっかけに、当宿がなれたらと思っています。その為には、他の宿と連携を図り、更に旅行しやすいプランを提供する必要があると考えています。
現在、日中私達が不在になる事や食事を用意する事が難しいため、連泊をお受けできない状況です。いずれキッチンを備えた離れを造り、長期宿泊を希望される方にも対応できる様整備していきたいです。訪問看護を希望される方や末期がんの方にも、旅行という素晴らしい時間を提供できたら、看護師として、宿を始めて良かったと、これほど思えることはないと考えています。
夏期以外の平日はお客さんが少ない為、私は現在でも訪問看護を続けています。妻も看護師として働いています。大変ですが、それ以上にやりがいを感じています。
私達の宿を通して一人でも多くの方が、旅の幸せを感じて元気になれる様、続けていきたいと頑張っています。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。
また12月頃、「ナーシングトゥデイ」にて記事が載る事になりました。
ちょっと内容を変えるつもりですが、あまり変わらないかも…(笑)。
また同じ4,500文字。
さて~、頑張るかぁ。

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コメント

    • ひかり
    • 2012年 11月 16日

    記事を読みました。
    オーナーの思いが伝わってきて感動しました。
    特に「障害者優先の宿は作りたくない」の箇所に賛同します。
    多様性って、選択肢を多くするのではないと思うのです。選択肢を増やすことをしていくと、いつかは行き詰まると思うのです。
    うまく言えませんが、もっと根源的なところでの多様性は何かを考えていく上で、この箇所はとても参考になると思います。

    • 和みの風
    • 2012年 11月 17日

    点字ブロックは視覚障害者には有効ですが、
    パーキンソンの方には転倒の原因になります。
    よりいい介助は一緒に歩いてあげること。
    でも、それでは自立に繋がりません。
    対症療法ではなく、違った方法でのアプローチが
    旅行の幸せに繋がるのではないかと考えています。
    そのアプローチがまだまだ十分ではありませんし、
    これから考えて行くべき事なのかとも思っていますよ。
    長い記事を読んで頂きましてありがとうございます。

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