医療と福祉

自宅で死ぬということ

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80代のある方が先日亡くなりました。
最期まで自宅で過ごし、
点滴1本することなく、
息を引き取りました。
自宅でなくなることが非常に難しくなったこの現在において、
とても尊厳のある最期を迎えられたと思っています。
それは、
その方が今まで過ごして来た人生そのものと
言っていいのかもしれません。
まわりを支えるご家族も、
ご本人の気持ちを十分に考えてのことだったと思います。
その方は、
ぎりぎりまで自分でごはんを食べ、
水を飲みました。
きっと、「点滴くらいすべきでは」と考える方も多いと思います。
その考えはとても自然なこと。
誰だって長生きしてほしいと考えるのですから。
でも、そうはしませんでした。
歩くことが難しくなっても、
好きな小説を読む事が出来、
たまには冗談を言って笑わせていたりするのです。
「とにかく苦しみを味あわせたくない」と願うご家族は、
自然な成り行きを見守りました。
そして、旅立たれました。
私は、ホスピスにいましたので、
何十人もの死を直面したことがあります。
しかし、これほどきれいな最期を見たことがありません。
食べられなくなったから点滴、
飲み込めなくなったから胃瘻、
と条件反射のように進んでしまう医療に対して、
「命の大切さ」を違った意味で示してくれたような気がします。
滅多に考えることはないとは思いますが、
誰でも必ず訪れます。
真剣に考える時があってもいいのではないかと、
最近とても強く思うのです。
ご冥福をお祈り致します。

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