介護が必要なご両親と一緒に旅行をするためのヒント集、今回は業者を利用した介護旅行についてです。初めてご覧になる方はこちらの「心構えについて」からご覧ください。
- あくまで旅行を楽しむためのヒントです。こうすればうまく行くといったマニュアルではありません。
- 介護者の体調や気持ちの状態によって、必ずしも文章と同様の反応が得られる訳ではありません。その方にあわせた対応をお願いします。
- 旅行について個別的なアドバイスを希望される場合は、こちらをご覧ください。
プロに頼めればいいのだけれど…
今まで触れてきませんでしたが、介護旅行を専門とした会社はずいぶんと増えました。「お身体がご不自由でも安心・安全なご旅行を!」「ご高齢で旅に不安を感じている方へ」など、旅とケアの専門家が付き添いして、旅行に連れて行ってくれます。「介護旅行」で検索すれば、以前よりかなり多くの会社が閲覧できます。
非常にいいサービスで、利用される方も増えていると思います。でも、やっぱり一番の感想はここ。
「料金がちょっと…」
料金が高いと感じる背景には、一般のツアーとの価格差が激しい面もあります。
では、一般のツアーはなぜあれほど安いのでしょう。企業努力の賜物で、いろいろと理由はあるようです。
- 早朝や深夜など航空料金が安い便を利用する。
- お客様を呼び込みにくい平日に設定して、宿泊料金を下げる。
- たくさんのお客様を呼び込む事で、料金が低くても利益を上げる(薄利多売)。
- ホテルに対し大人数の宿泊を確約する事で、一人当たりの宿泊料を下げてもらう。
- 土産物店と連携して手数料をもらう。
つまり、人が旅行しにくい時期や時間を設定して、かつ多くの方に来てもらう。効率的に旅行をしてもらう事で、ツアー料金を下げているのですね。
一方、介護旅行の場合。実は今書いた理由が全て当てはまりません。
- 高齢者に早朝や深夜の移動は困難
- 同行者の都合で平日の日程は不可が多い。
- その方にあったプランを設定するため、コストがそのまま上乗せ。
- バリアフリールームは宿泊料が割高。
- 参加者が少ないので、土産物店から手数量はもらえない。
さらに添乗員さんが、ヘルパーさんや看護師なので人件費も上がるんですね。1泊2日の旅行でヘルパーさんに同行してもらった場合同行料だけで5万円以上、看護師が同行する場合はさらに上がります。そしてプランニング料、ヘルパーさんの交通費や食事代、宿泊費は別料金です。
参加者の人数があまりにも少ないのでので、どうしても1人分の料金は上がってしまうのです。つまりオーダーメイド旅行です。
最近は少人数のツアーを組み、少しでもリーズナブルな旅を提供している旅行会社もあるので、探してみる価値はあると思います。
「病院やショートスティで1泊したってこんなにかからないのに!」と思うかもしれません。実は、そこにも落とし穴が。忘れてしまいがちですが、病院やショートスティは医療保険や介護保険が使われています。つまり、本当の料金の1〜2割ですんでいるんです。こういった保険制度により非常に安価に医療、介護サービスを受けているからこそ、介護旅行が高く感じてしまう要因にもなっていると思います。
「じゃぁ、介護旅行も保険でまかなうべきだ!」……と、言えるほど日本が潤っていない事は皆さんご存知ですよね…。
親戚や知人にケアが得意な方はいませんか?
旅行会社にもよりますが、依頼した介護旅行はとてもすばらしく、料金以上の満足が得られていると聞きます。そのため、皆さんリピーターとなり旅行を満喫されているようです。
昔は旅行自体難しかったのですが、お金を出せばいいサービスが受けられるようになりました。
とは言え、やはりかなりの高額。なので、「そこまでは…」という方のために提案したい事があります。
例えば、看護師もしくはヘルパーさん。ディサービスの職員もいいですね。そういった方が親戚や友人にいませんか?ご両親と旅行する時、一緒についてきてもらうのはいかがでしょうか。
もちろん業者の方のような旅行のプロではないので、情報量や各機関へのアクセスなどは不十分かもしれません。「私、外出の援助はした事ないから…」「私でいいの?」と言われるかもしれません。それでも一般人よりは体調の変化に対応できるはず。是非、お願いしてみて下さい。実際、和みの風にご宿泊される方で、親戚の看護師さんやヘルパーさんが同行するケースはよくあります。皆さん嬉しそうに介助されていますよ。人に喜んでもらいたいという思いで始めた仕事ですから、旅行のお手伝いはやりがいのある役割だと思います。
あまり交流がない方だったら、何回か練習するのも良いですね。喫茶店やお買い物などに一緒に外出なんていうのもいいですね。公園にお散歩というのも。一緒に過ごす事で、その方の動き方や介助方法、疲労感などを掴めるので、そういった情報はその後の宿泊旅行にとても活かせます。日帰り温泉などにいけたら、介助する人もされる人もいい関係になれるのではないでしょうか。
ただ一つ注意点。
宿泊費や食事代については、事前によく話し合った方がいいかと思います。その方との関係性によるものなので一概には言えませんが、宿泊費だけでも「お手伝い代」としてご両親が出すのはありだと思います。業者に頼む事を考えたら、よっぽど安いと思いますよ。いい協力者がいれば、旅行はグンと成功に近づきます。
私の親戚から依頼が来たら?……もちろん喜んでお受けしますよ。
自分が、なる!
親戚や友人にもいない場合、もう自分が専門家になるしかありません。といってもヘルパーの免許を取る訳でありません。自分の両親に対してだけ、旅行に必要なケアが出来るようになればいいのです。
独学という方法もありますが、やはり教わった方が習得はしやすいでしょう。ディサービスに行っているならば、まず見学。どのようにスタッフが援助しているのかを確認します。もし、可能であれば教えてもらうのもいいですね。
訪問看護を受けているのであれば、是非看護師に聞いてみて下さい。それは業務の範囲内。しっかりと教えてくれるはずです。
こういった取り組みもあります。
教わる具体的な内容は、その方によって異なります。車椅子の使い方だったり、歩くときの介助の仕方、入浴時の注意すべき点などが挙げられると思います。ディサービスの外出イベントで一緒の同行させてもらえたら、いい勉強になりますね。
旅行のためにと覚えた技術は日常の介護でも活用できます。体調の変化など読み取る力がついてきます。きっと有効な知識と技術になる事でしょう。安全な旅行のためにその方を看る力もつけられたら素晴らしいですね。